植物、水、自然から音を創り出す。サウンドクリエイター田中圭吾さんのアトリエを訪ねる旅。

植物、水、自然から音を創り出す。サウンドクリエイター田中圭吾さんのアトリエを訪ねる旅。

VIE Tunes/VIE Tunes Proには、脳波を整えてくれるさまざまな音楽が収録されている。それらの音楽制作を手がけているアーティストの一人がNiceness Musicの田中圭吾さんだ。

今回VIEチーム一行は小淵沢にある田中さんのご自宅兼スタジオにお邪魔し、変態的ともいえる田中さんの制作現場を取材させていただいた。

 

音楽制作の拠点は、山小屋のようなスタジオ。空気、色、におい、すべてが刻々と変化する自然の中での暮らし

山梨県と長野県の県境に位置する町、小淵沢。駅を出ると、視界いっぱいに霧に包まれた八ヶ岳のシルエットが目に飛び込んできた。田中さんのスタジオはここから車でほど近い山の中にある。

「お蕎麦でも食べますか。」

いつのまにかゆるやかになった時間の流れに乗るように、田中さんお手製の美味しい昼食をいただくところから始まった。

天窓から光が差し込む山小屋のような空間には、どこか神秘的な空気が流れている。

「自然の中で暮らすようになって、都会よりも圧倒的に情報量が多いことに気づきました。葉っぱの色も、空気の温度も、植物も、毎日めまぐるしく変化します。五感もどんどん鋭くなってきますね。この季節になると、きのこがたくさん採れるんですよ。先週もすぐそこの庭で山盛りのきのこが採れましたよ。」

 

 

植物から音楽を採取する。不規則なのに、心地良い自然のパルス

ふと、テーブルのうえの多肉植物を見ると、なにやら電極のようなものがついていた。

これはもしかして…

「あ、聴いてみます?いま流れているこの音楽は、この植物に流れている電気信号をリアルタイムで入力し、そこにメロディを乗せて作っています。このパルスは電極をつける部位によっても変わりますし、もちろん植物ごとにも変わります。ピッチがすごくゆっくりですよね。でもすごく心地よい。試しに、ご自身の体につけてみてください。」

言われるがままに電極を自分の両手につけてみると、音楽が様変わりした。ピッチが速くなり、音の数が多くなったように聴こえる。

「日々機械に触れている人間の体は帯電していて、植物よりも電気量が多いみたいです。なのでピッチが速くなったり、情報量が多い感じがしますよね。でも20分ぐらい裸足でアーシングすると、植物と同じぐらいのピッチになりますよ。」

この小さな多肉植物が奏でる音楽を聴いていると、少しずつ強ばっていた心が解けていくような感覚になる。人間は都会の渦に飲まれ、あまりに速いピッチで生きてきてしまったのかもしれない。植物たちは、生き物本来のあるべきペースを教えてくれるようだった。

 

波の模様が教えてくれる、人にとって“心地よい音”と“美しいと感じる形”の相関関係

田中さんのアトリエにはもうひとつ、自然と音楽を繋げてくれる装置があった。サイマティクスだ。

 

サイマティクス

サイマティクス(英: cymatics)とは、砂や水などの媒質によって物体の固有振動や音を可視化すること、またはその現象の研究[1][2]。この語はギリシア語で波を意味する κῦμα に由来し、人智学思想を信奉していたスイス人のハンス・ジェニー(1904年-1972年)によって考案された。(※出典:ウィキペディア)

スピーカーの上にシャーレを置いて薄く水を張ると、スピーカーから流れる音楽によって水に幾何学的な模様が現れる。田中さんは、お手製のサイマティクス装置でさまざまな周波数の模様を研究している。

ぐちゃぐちゃとしたノイズのような模様になる周波数もあれば、曼荼羅のようにまるでデザインされたような“美しい”模様になる周波数もある。この模様はシャーレの大きさや形、水の量などによって変わるのだが、人が“美しい”と思う模様と人にとって“心地よい”と感じる音の周波数にはどうやら相関関係がありそうだ。

周波数や音量を変えると、生き物のように模様が刻一刻と変化する。数秒前の波の余韻から今この瞬間の波までが足し算されることで作られた波形は、一度たりとも繰り返されることはない。それは、過去の記憶の集積のうえに生きている私たち人間の生き様のようでもあった。ときには混沌とした形に見えることもあるが、その上に新たな波が加わることで美しいひとつの模様になる日がくるのだ。

今回VIE Chill/Zoneを使って、KeigoさんのChill状態の脳波とZone状態の脳波を測定させていただきました。

Keigoさんの脳波を見ると、集中状態のときの方が脳波が休まっていることがわかる。逆に瞑想状態のときは脳が活発に動いていた。

--- 今回、ご自身の脳波を測定してみていかがでしたか?

瞑想しようと思っても、考え事をしてしまう癖がありますね。逆に音楽を作っているときはいつも脳がゾーン状態に入っていて心地よいので、何か一つのことに向かっているときの方が脳が休まるのかもしれません。

Totonou Musicを聴いているときは、職業柄どうやって作っているのかが気になってしまって逆に脳が活性化してしまったかも(笑)

田中さんのアトリエで繰り広げられる音あそびをすっかり日が暮れるまで楽しんでしまったVIEの取材チーム一行。どこか遠い国でずいぶんと長い時間を過ごしたような感覚になったのは、植物が奏でる音楽のせいだろうか。扉を開けると小淵沢の森はすっかり冷え込んでいて、秋の夜風がひんやりと体に入ってきた。

VIE Tunes/VIE Tunes Proでは、これから田中さんとコラボレーションしたTotonou Musicを開発予定。お楽しみに!

 

 

田中 圭吾 / Keigo Tanaka

音楽家 / 音楽プロデューサー

2011 年にアンビエントレーベル『Niceness music』を立ち上げ、ヨガやヒーリングミュージック のプロデュースを開始。

ヨガミュージックアルバム『Light on Yoga Nada』シリーズ、日本ヨーガ瞑想協会会長 綿本彰氏 との『癒しの呼吸 - The Thealing Breath』、世界的キールタンシンガー Daphne Tse のアルバム 『Soul Songs』などのプロデュースをし、日本における現代ヨガミュージックの礎を築いた。

フィールドレコーディング、水、植物、菌などの生体電気信号、様々な民族音楽と電子音を有機的に結びつけ、自然環境にある周波数や波動パターンなどからも着想を経て、アンビエントからダンスミュージックまで、感覚を拡張するメディテーティブなサウンドを得意とする。ユニットとして『Crystal Nada』『Sinetar』 でのDuo活動、パルスミュージックや立体音響、サイマティクスを駆使したインスタレーションやソロライブ、ワークショップ、DJなどの活動も展開。

Niceness music HP:https://www.niceness-music.com

<経歴>

  • インドリシケシInternational Yoga Festival 2018に出演。
  • キールタンシンガーDaphne Tse のアルバム 『Soul Songs』をプロデュース。
  • バンスーリ奏者のgumi とのユニット『Pranada』で国際ヨガDAY関西2018に出演。
  • サーフヨギーニTamaoとのヨガミュージックアルバム『Ocean Flow』をプロデュース。神宮ス タジアムナイトヨガ出演。
  • サトヴィックビーナ奏者の松久ひろゆきとヨガ、キールタンシンガーMashumi Lacosteのキールタンアルバム『光』をプロデュース。
  • Thai International yoga Festival 2018出演。
  • Bali Spirit Festival 2019 にミュージシャンやDJとして出演。
  • 成都 Panda yoga Festival 2019に出演。
  • 日本ヨーガ瞑想協会会長 綿本彰氏とのヨガと音楽のセッションを数多く展開。
  • 2019年、2020年光と反射の空間作品を創り出すインスタレーションアート集団Mirror Bowler の 公式楽曲を手掛ける。
  • 2020年より東急ホテルズの心地よい眠りへ誘う音楽体感プラン『Sleeping to Dream』の音楽プ ロデュースを手掛ける。
  • 2023年 ロシアSkazka Festival に出演。
  • 日本各地のフェスティバルやイベントで『Crystal Nada』『Sinter』 とのDuo活動を展開。